島の風に吹かれながら「気づく力」と「手のひら」の感性を育てていく、
新人セラピスト・宙の小さな成長物語。『そらいろスパ日和 〜宙のてのひら物語〜』がWEB上でスタート。忙しい毎日で少しだけ疲れた時に、そっと覗きにきてください。心も体も優しくほどけるような、そらいろの便りをお届けします。
『そらいろスパ日和 宙のてのひら物語』Story 13
Story13「後編 真白 揺れる心」
フェイシャルルームに通された彼女は、ふぅ、と小さなため息をついた。
白いワンピースの下に隠れていた緊張が、少しだけ顔をのぞかせる。
「ここ最近、よく夢を見て目が覚めちゃうんです」
ぽつりと漏らした声に、宙はうなずいた。
「大切なイベントを控えてると、心って知らず知らずのうちに緊張しちゃうんです。
幸せなことでも、“変化”はストレスになることがあるんですよ」
彼女の頬が、少しだけほころぶ。
「ホルモンバランスは、自律神経や心のゆらぎにとても敏感です。
皮脂の分泌、ターンオーバー、毛穴のつまり……ぜんぶ、心の影響が出る場所なんです」
ゆっくりと施術が始まる。
温かなスチームが肌を包み込み、宙の指がやわらかく頬に触れた。
クレンジングは、あたたかいミルクのように肌をなで、
ホホバオイルと植物のエキスを含んだジェルが、溜まっていたざらつきと疲れを溶かしていく。
「目を閉じて、呼吸だけ感じてくださいね」
宙の声は、風に揺れる木の葉のようにやさしい。
デコルテから首、フェイスライン、耳の下のリンパ節へと流れるリズム。
硬くなっていた咬筋(こうきん)が、ほぐれていくと、まるで言葉にできなかった感情までほどけていくようだった。
施術途中からお肌が輝きだすのを見て、心が息をし始めたのを宙は感じた。
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施術後、彼女の表情は見違えるように柔らかくなっていた。
赤みはほんのり残っていたけれど、それ以上に「透明感」が、心からにじみ出ていた。
鏡を覗くお客様の笑顔がぱっと花開く。
「うわあ、とてももちもちして、つるんとしてる。」
「よかったです。 少し赤みは残ってますので、7〜10日後にまた整えていきましょう。結婚式まで、一緒に楽しみながら準備しましょうね」
アフターティのアドバイスでは、
スキンケア そらいろメモをさしあげる。
彼女は静かにうなずきながら、鏡の中の自分を見つめていた。
そこには、不安よりも、少し先の幸せを見つめるまなざしがあった。
「自分でも、知らないうちにストレス感じてたんですね。なんか今日心もほぐれて癒されました!エステってすごい!…」
彼女は、そっと口元に手を当ててつぶやいた。その声は、小さなつぶやきだったけれど、宙の心にも深く響いていた。
“必要なのは、肌じゃなくて、心の深呼吸かもしれない”——そんな言葉が、ふと浮かんだ。
続く
次回8/24はそらいろ散歩ミニコラムををお届けします